【リスキリングの進め方】導入 4ステップと効果を引き出す実践ポイント
2023年06月14日
最終更新日:2026年03月09日

「リスキリングを導入したいが、何から手をつければいいかわからない」「ステップは調べて理解したが、現場ではなかなか進まない」そんな悩みを抱える推進担当者は少なくありません。
リスキリングは、目的設定から学習手段の選定、そして現場でのアウトプットまで一連の流れを正しく設計することで、はじめて成果につながります。その一方で、進め方を誤ってしまうと「研修をやってそのまま終わり」になり、無駄なコストだけがかさむ結果にも繋がりかねません。
本記事では、リスキリング導入に必要な4ステップとステップごとに重要な実践のコツを中心に、よくある失敗例のパターンや企業事例、活用できる助成金制度まで解説します。読み終えたその日から、自社のリスキリング推進を具体的に動かせる内容です。
リスキリングの意味をわかりやすく解説
リスキリングとはどんな意味?
リスキリングとは、企業がおこなう職業能力の再開発・再教育のことを指します。
企業が音頭をとって社員の学び直しのための環境を整えるのが、リスキリングによる人材育成のやり方です。学ぶのはおもにデジタル部門に関連するスキル、知識になります。
企業の目的は人材の育成です。時代の変化に対応できる人材を育てるため、社員をアップデートさせる学びの機会を与える最新の人材戦略になります。
DX時代に必要な人材戦略
社員の立場からすると、リスキリングは会社のお金であたらしいビジネススキルを習得できる大きなメリットがあります。今後のキャリアアップのためにも魅力満載です。
当然、企業側はこれまで以上に人材育成にコストをかけることになります。組織にとってどんな導入メリットがあるのでしょうか。
実は今、人材育成・・・しかもリスキリングこそハイリターンを期待できる投資対象です。現在多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、本格的なDX時代に突入しました。
どの企業も、最新のデジタル業務に対応できる人材を揃えるのに奔走しています。時代の波に乗り遅れないためにも、デジタル人材の補充は早急な課題です。
既存基幹のシステムも老朽化している上、かつてIT化の先陣を切った社員も高齢になっています。DX時代のあらたな業務をスムーズにこなせるよう、有能なデジタル人材を育成しなければなりません。
最先端のテクノロジーが飛び交うデジタル競争に勝つためにも、スペシャリストが必要です。戦力となる人材を新規雇用すると、一から教育しなければなりません。
すでにいる従業員に学び直しの場を提供し、デジタル人材としてアップデートした方が低コストで済み、時間も短縮できるメリットがあります。
リスキリングの導入方法!実施する4ステップ

STEP1 リスキリングの目的をはっきりさせる
最初に取りかかるのが、目的を明確にする作業です。リスキリングはただ漠然と学ぶのではなく、会社の利益につながるあたらしいスキルの獲得をめざします。
なぜやるのか、社員に目的を伝えましょう。DX時代のあたらしい業務に対応できる人材を育成するといっても、企業によって最終的なゴールや攻め方はちがいます。
経営戦略や企業理念をもとに、まずはリスキリングをおこなう目的をはっきりさせなくてはなりません。
【実践ポイント:現場に「自分ごと化」させる伝え方】
目的を経営層だけで決めて通達するだけでは、現場は動きません。「なぜ自分がリスキリングに取り組む必要があるのか」について社員一人ひとりが理解できるような伝え方が大切です。
特に効果的なのは、経営戦略と個人のキャリアを紐づけて伝えるアプローチ方法です。たとえば「3年後にこの業務はAIに置き換わる可能性がある。だからこそ今、AIを使いこなす側のスキルを身につけることで、自分自身のキャリアを守ることにつながる」といった具体的なストーリーで語ることで、社員の納得感がそれだけでも大きく変わる可能性があります。
また、全社朝礼やメールで一斉に通知するだけでなく、部門ごとの説明会で「自部門の業務がどう変わるか」を具体的に示すのも有効です。
【よくある失敗事例】
「DX推進のため」という抽象的な目的のまま進めてしまうケースです。このように目的が曖昧な状態だと、具体的に学ぶべきスキルも定まらず、STEP2以降の流れがすべてブレてしまいかねません。例えば、「〇〇部門の△△業務を自動化できる人材を□名育成する」のように、数値や業務名を含む具体的なゴールに落とし込みましょう。
STEP2 足りないスキルを洗い出す
目的が決まったら、ゴールするために必要なスキルを洗い出します。従業員がもっているスキルをチェックし、現状を把握しましょう。
目的と現状を照らし合わせ、足りないスキルをピックアップします。リスキリングの中心となる部署も決めてください。
企業ではたらく従業員全員がリスキリングの対象になるとはいえ、すべての部署に均等にエネルギーを注ぐことはありません。AIに仕事を奪われそうな部署の従業員こそ、早急にリスキリングの実施が不可欠になります。
【実践ポイント:スキルマップの簡易的な作り方】
スキルの洗い出しには「スキルマップ」の作成が便利で効果的です。これには、大がかりなシステムやツールを導入しなくても、Excelで十分に対応することができます。
やり方はシンプルで、縦軸に従業員名、横軸にSTEP1で設定したゴール達成に必要なスキル項目を並べるだけです。各セルに「◎できる/○基礎レベル/△未経験」など3段階でスキルレベルを記入してもらうだけで、各部門全体のスキル分布が一目で把握することができます。

【実践ポイント:優先部署の判断基準】
全社一斉にリスキリングを進めることが理想ではありますが、予算や人的リソースの都合でできないケースもあります。その際に優先すべきは、AI・自動化による業務代替リスクが高い部署から始めることです。具体的には、定型的なデータ入力や集計業務が中心の事務系などの部門や、古い既存システムを使っている部門が該当します。
こうした部署から優先的に進めていくことで、リスキリング後の業務改善効果も数値ではっきりと見えやすくなり、その改善効果を元に他部署への展開時の説得材料にも繋がります。
【よくある失敗事例】
経営層が「全社員にDXリテラシーを」というような号令をかけた結果、全員に平等に同じ研修を一律で受けさせてしまうパターンです。実は、部署や役割によって必要なスキルレベルやかけるべき時間は異なります。スキルマップで現状を可視化せずに一律の研修を実施してしまうと、すでにスキルを持つ社員には退屈で時間を無駄にさせ、また未経験の社員にはついていけないアンバランスな内容になり、どちらのモチベーションも下がってしまいます。
STEP3 リスキリングの実施方法を決める
リスキリングの実施方法を決めるのも、大事なステップの1つです。どのような方法で従業員に教育の場を提供するのか決める必要があります。
企業が先陣を切って体制を整えるやり方こそ、リスキリングの真髄です。予算など色々な角度から熟考し、学びの方法を決定しましょう。
働きながら学ぶため、オンライン研修などコア業務に支障が出ない教育システムを選ぶ必要があります。勤務時間外に学びを強要するのもNGです。
【実践ポイント:学習手段の使い分け基準】
リスキリングの学習方法は大きく分けて3つあり、それぞれ得意な領域が異なるので注意してください。
オンライン研修・eラーニングの場合、デジタルリテラシーやデータ分析の基礎など、知識のインプットに適しています。時間と場所を選ばないため、業務と両立しやすいのが最大の利点です。
OJT(実務訓練)の場合は、学んだ知識をすぐに実際の業務で使う段階に適しています。通常業務で使うツール操作や業務フローへの組み込みなど、座学だけでは身につかない実践力が養えます。
また、外部研修・ワークショップの場合、AIやクラウドなど専門性の高い領域で、社内にノウハウがない場合に有効です。
多くの成功企業で一般的なパターンとしては、eラーニングで基礎を学び、OJTで実践するという組み合わせを採用しています。
【よくある失敗事例】
ゴールや目的を考えずに、「とりあえずeラーニングを導入すればいい」と手段から入ってしまうケースです。STEP1の目的やSTEP2で特定したスキルに合った手段や手順を選ばないと、受講率は高くても実務に全く活かされず「ただやっただけの研修」になりがちです。手段の選定については、必ずSTEP1・2の結果に基づいて判断しましょう。
STEP4 スキルをアウトプットする
リスキリングはあくまでも実践的なスキルや知識を学ぶものなので、現場で活かせるようにスキルのアウトプットまで管理します。
学ぶだけでゴールできる学習ではなく、実際の業務で活用できるかどうかがポイントです。
学んだことをアウトプットできる場を用意し、実践とフィードバックを繰り返してスキルを磨くサイクルを繰り返します。
【実践ポイント:アウトプット機会の設計例】
学んだスキルを自身にしっかり定着させるには、意図的に実務で使うチャンスを増やす必要があります。
たとえば、データ分析スキルを学んだ社員の場合には、自部門の業務データを使って改善提案を課題として設定します。その提案内容を上長やチームに発表する場を作ることで、インプットとアウトプットの一連のサイクルが自然に回ります。
その他にも、学んだスキルを活かせる社内プロジェクトへの自由参加の機会を用意することや、部門横断の勉強会で学びを共有(アウトプット)する仕組みを作ったりする方法も効果的です。「一回学んで終わり」にしない仕掛けを事前に用意しておくことが重要です。
【実践ポイント:効果測定の指標】
リスキリングの効果や成果を経営層や現場に示すためには、定量的な指標での効果測定が必要になります。その際には、以下の3つの指標を段階的に追っていくのがおすすめです。
1つ目はリスキリングの受講率・修了率です。まず「どれだけの社員が学びを完了したか」の人数を把握します。次のポイントが業務適用率です。学んだスキルを実務で使っている社員割合を、アンケートや上長ヒアリングで確認するようにしましょう。そして最後の3つ目は生産性・業務効率の変化の比較です。リスキリングの実施前後で業務時間やエラー率、売上などの数値が実際にどう変化したのかを数値で比較します。
最初の1つ目だけで結果を判断する企業も多いですが、2つ目・3つ目まで追うことで、リスキリングが「コスト」ではなく「投資」であることを社内に示せるようになります。
【よくある失敗】
研修の受講完了のみをゴールにしてしまい、その後のフォローやフォローアップが一切ないパターンです。エビングハウスの忘却曲線が示すとおり、学んだ内容は1週間で約8割を忘れると言われています。

つまり、研修直後にアウトプットする機会がなければ、せっかく投資した研修費用が無駄になってしまう可能性もあります。最後のSTEP4は「研修後の仕組みづくり」であり、全4パートの中で一番重要で外してはいけない工程です。
リスキリング導入事例からわかる成功の共通ポイント
国内企業8社の事例を簡単にチェック
リスキリングに取り組む国内企業の成功事例をチェックしてみましょう。
・株式会社ベネッセホールディングス
米国Udemyと提携し、オンライン学習プラットフォームの国内事業展開を手がける。他社のリスキリングも支援。
・株式会社すかいらーくホールディングス
7割のグループ店に配膳ロボットを3,000台導入し、従業員の人数を減らさないままロボットの操作や管理方法の再教育を実施。
ロボットを活用することで従業員の身体的負担も軽くなり(歩数が42%減)、サービスの向上や業務効率化に成功しました。
・富士通株式会社
10万人規模のリスキリングを実施。教育のための投資額も約4割増やし、デジタルラーニングプラットフォームの活用など、社員みずから学べるよう研修制度を拡大しました。
将来的な人材ニーズに対応し、あたらしいビジネス領域の創造を目指します。社外企業のDX推進のため、DX専門の子会社も設立。
・JFEスチール株式会社
従業員のレベルに合わせリスキリングを実践し、eラーニングを活用したリテラシー教育も実施。
社内でデータを扱える人材の強化・育成を目指し、実際に約3年で350人のデータサイエンティスト輩出に成功しました。現在も次々にスペシャリストが誕生しています。
・SOMPOホールディングス株式会社
DXの基礎研修を実施。オンライン企業内大学である損保ジャパン大学を設立し、学びの場を提供しています。
外部のeラーニング教材に頼らないシステムが話題になりました。
・パナソニックホールディングス株式会社
従業員のデジタルスキル向上を目的に、「デジタルアカデミー」を設立。AIやデータ分析、クラウド技術などを学べるオンライン学習プラットフォームを導入し、約24,000人の社員が受講しました。
社内でのデジタル人材育成を進めることで、業務効率化と新規事業開発を加速。
・日立製作所
グローバル市場での競争力強化を目指し、AI・IoTを活用した業務改善スキルの習得を推進。社内プラットフォーム「Hitachi University」を活用し、従業員がデータサイエンスやDXスキルを学べる環境を整備しました。
また、特定のスキルを持つ社員に対し、社内公募制度を導入し、新たなキャリアへの挑戦を支援。
・三井住友銀行(SMBCグループ)
デジタルシフトを推進するため、全社員向けにデータリテラシー研修を実施。また、社内の専門人材育成として、エンジニアやデータサイエンティストを対象に、高度なプログラミング・AI開発研修を提供。
さらに、リスキリングを活用した社内副業制度を導入し、社員が異なる業務領域でスキルを活かせる環境を整備。
成功事例の共通点はオンラインサービス
企業の成功事例に共通しているのは、オンライン研修の活用です。全社員を対象に大々的なリスキリングを実施するケースも多く、オンラインサービスを利用する企業は7割を超えました。
予算の上でも時間の上でも、対面研修だけでは中々追いつきません。オンライン研修は企業側にとってはコストカット効果に加え、教育訓練や課題を一元管理しやすいメリットがあります。
受講する側も時間と場所の制限を受けにくいので、研修に振り回されずに済むでしょう。オンライン研修こそDX時代にマッチしたサービスです。
※関連コラム:人生100年、仕事50年時代の学び直し(リスキリング)~なぜ、今「学び直し」なのか?~(2023年4月14日掲載)
【お役立ち資料】成功事例に学ぶ!リスキリングの動機づけと仕組みづくり
- 社員のリスキリング促進の為に、会社として取組めることや、やるべきことは何なのか?
他社事例を交えてご紹介します。
- 【お役立ち資料の内容】
1. リスキリングとは
2. 「学び」に対する調査結果
3. どうしたらリスキリングは進むのか
4. 会社として取り組むべきポイントとは
5. 他社事例
6. 当社サービス活用事例無料ダウンロードはこちら
コラム執筆者
「サイバックスUniv.」会費制サービスは、eラーニングと公開研修あわせて約5000コースが定額で受け放題となるサービスです。1998年4月より「企業の未来は人材が創る、伸びる人材が企業を創る」をコンセプトに、ITを取り入れた新しい教育スタイルを提供しております。幅広い研修ラインアップをご用意しており、業種や職種を問わず、現在3,000社以上のお客様にご利用いただいております。
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