サイバックスUniv.
無料体験版 お申込み

お役立ちコラム

中小事業主に、パワハラ防止法が施行開始(2022年4月以降)

2022年04月26日

パワハラ防止法の内容

改正労働施策総合推進法(いわゆる、パワハラ防止法)は、「パワーハラスメント」の定義を初めて法律上で明記したものであり、事業者にパワーハラスメント防止のために雇用管理上の必要な措置を講じることを義務づけています。措置義務に違反した場合には、行政による指導、勧告、公表等の対象となります。

 

このような企業側の措置義務については、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の中で、主として次の3点が挙げられています。

 

・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

 

 

上記指針の内容を踏まえ、企業が実際に行うべきことの具体例としては、

①就業規則等にパワーハラスメントの防止に関する規定を加筆し、これに違反した場合の処分等を明記すること

②パワーハラスメント防止のための周知・啓発又は社内研修の実施をすること

③パワーハラスメントの相談窓口の設置・整備をすること(ハラスメント防止規程や内部通報規程等の見直し)

などが挙げられます。

 

これまでは、中小事業主であれば、上記のような措置義務は努力義務とされていたので、パワハラ防止法対応を先延ばしにしていた企業も少なくないと思います。

しかしながら、2022年4月から、中小事業主も大企業と同じように法的義務として適用されることになったので、

 

・就業規則やハラスメント防止規程等の整備

・パワーハラスメント相談に対応する体制整備

・社内研修の実施等

 

を早急に進めていく必要があります。既に先行して対応済みの企業もあるかとは思いますが、施行開始のこのタイミングで、抜けや漏れがないかという点を再チェックすることは必要であると考えます。

改正公益通報者保護法との関連性

企業内における不祥事が後を絶たないという状況を踏まえ、通報促進等を促す観点から、公益通報者保護法が改正されました(2022年6月施行予定)。

 

特に重要な改正点は、事業者に内部公益通報の体制整備義務が課されたことであり、これを怠った場合には行政から指導や勧告を受ける場合があります。体制整備義務の内容は、消費者庁から指針とその解説が出されており、これらを参照しながら企業の実態に合った体制整備をすることが必要です。

 

中小事業主(常時使用する労働者の数が300人以下の事業者)との関係では努力義務とされていますが、行政による指導対象にはなり得るため、内部通報制度の見直しをする必要性があることに変わりはありません。

 

ハラスメントの相談窓口と社内の不正行為や倫理違反行為等の相談窓口を同じにしている企業もあると思います。そのような場合には、上記のパワハラ防止法を踏まえた規程整備と同時に、改正公益通報者保護法の観点からの整備も必要である点をご注意ください。

法改正対応の活かし方

昨今、労働者側のハラスメントへの意識は高まっていますので、企業が必要な対応を怠ると、予想外の損失を被るケースもあります。特にパワーハラスメントの場合には、これに思い悩んだ労働者が自殺をしてしまうケースもあります。

 

最新の裁判例では、上司による指導はパワーハラスメントに該当しないと判断されたものの、労働者が上司との関係に思い悩んでいたことは企業側で認識していたが、必要な措置を講じなかったことなどを理由に、多額の損害賠償責任を認めた事例もあります。

 

企業としては、パワーハラスメントか否かの二択という意識、形式的な法改正対応を行うという意識ではなく、より良い職場環境を維持していくべきであることを意識し直す必要があります。

 

また、上司の立場から、単にパワーハラスメント禁止だけを強調されてしまうと、実際の現場で指導をすることができないという不満をよく耳にします。適切な指導とパワハラの間にはグレーゾーンがあるため、ここを埋めて上司の適切な指導を行わせることが、企業にとっては重要です。能力が高いがゆえに周りにも同じレベルを要求してしまい、達成できない部下を厳しく叱ってしまう上司が、パワーハラスメント申告を受けるという事態は、多くの企業で発生していると思います。このような事態は、上司及び部下が、協力しながらそれぞれの能力を十分に発揮して成果を上げることができていないという点で、企業の重大な損失といえます。

 

より良い職場環境を作り、その中で適切な指導を行えるようにすることができれば、上司・部下が能力以上の成果を発揮することができ、企業の競争力を高めることにもつながります。このような意識で、すなわち、ハラスメントを防止する、法改正対応をするというだけの意識ではなく、企業の競争力を高めるという観点で、法改正対応に注力していくことが重要です。


コラム執筆者

柴田 政樹

松田綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会)

労働訴訟(労働者たる地位の確認請求、残業代請求等)、労働審判手続き、団体交渉、企業の労務管理のアドバイス、就業規則の改定等、労働案件を多数担当。

執筆

  • 「合同労組からの団体交渉の申入れがあったら」(日本実業出版社・企業実務2016年1月号)
  • 「退職勧奨を契機として精神疾患等を主張されたら」【共著】(日本法令・ビジネスガイド2017年2月号)
  • 「副業容認で注意すべき企業の民事責任と対応策」【共著】(日本法令・ビジネスガイド2018年10月号)

講演実績

  • 2016年11月 社会福祉法人における労務対策セミナー(神奈川)
  • 2017年2月 企業における労働時間リスク対応セミナー(東京)
  • 2018年5月 労働訴訟を踏まえた労務対策セミナー(神奈川)
  • 2018年10月 医療機関向け労働時間リスク対応セミナー(広島)
  • 2018年12月 働き方改革対応セミナー(東京)
  • 2019年2月 労基署対応セミナー(千葉)
  • 2019年2月 働き方対応書式セミナー(大阪)

(その他多数の労務セミナーを担当)

eラーニング・Webセミナーってどんなもの?
気になった方は、まずは無料体験版

実際のeラーニングとWebセミナーのコース(一部)を
1ヶ月間無料でお試しいただけます