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リスキリングとリカレント教育の違い

2023年10月11日


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■リスキリングとリカレント教育の違い

「働く人のリスキリング支援には5年で1兆円を充てる」。岸田総理は2022年10月に記者会見で表明しました。その後、「育休や産休中のリスキリングを後押しする」と国会答弁し、批判を浴びたことを記憶している人のほうが多いかもしれません。とにかく、昨今「リスキリング」という言葉が注目を浴びています。

 

しかし、「リスキリング」、「リカレント教育」、「アップスキリング」、「学び直し」など似たような言葉があふれています。このコラムではその違いを解説していきます。

 

「リカレント教育」という言葉は結構古く、1968 年にスウェーデンで提唱され翌 1969 年に第 6 回ヨーロッパ文部大臣会議でスウェーデンのパルメ文部大臣が紹介したことがきっかけとされています。リカレント(Recurrent)とは「反復・循環・繰り返し」という意味で、「リカレント教育」とは社会人が一旦休職・退職をして、大学などの教育機関で学び直すことを指しています。仕事と学びを行ったり来たりしながら、個人が成長変化していくことを目指しています。

 

「リスキリング(Reskilling)」という言葉は、インターネットなどのテクノロジーの進歩に伴い2000年頃から米国で使われ始めた言葉だそうです。その後、この言葉が広まるきっかけとなったのがダボス会議です。2018年から3年連続で「リスキル革命」と銘打ったセッションが開かれ、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言されました。リスキリングとは、企業戦略(特に、DX戦略)に従って社員に新しい業務に就いてもらうために必要とされるスキルを習得させることを指しています。

 

似た言葉に「アップスキリング」という言葉があります。リスキリングは「新しい能力」を身につけ「新しい仕事」に就いてもらうことを指します。一方、アップスキリングは「既存の能力」を高めて「今までの仕事」で発揮することを意味しています。この2つの言葉の違いは、デジタル時代を生き抜くための新たなスキルの学び直しであるリスキリングと、既存の業務に関する知識やスキルの向上を目指したアップスキリングとに区別することができます。どちらでもいいじゃないかと思うかもしれませんが、リスキリング先進国ではこの2つの言葉は明確に分けられているそうです。

 

表1 リスキリングとリカレント教育の違い

キーワード リスキリング リカレント教育
広がるきっかけ 1969年
第6回ヨーロッパ文部大臣会議
パルメ文部大臣(スウェーデン)
2018年
ダボス会議
「リスキル革命」
主体 企業主導(政府主導) 個人主導
定義 定義企業が企業戦略(DX戦略)の一環として、社員に新しい業務に就いてもらうために必要とされるスキルを習得させること 個人がキャリアデザインの一環として、仕事と学びを行ったり来たりしながら大学等で学び直すこと

 

リスキリングとリカレント教育の違いとは何か?を表にまとめてみました。リカレント教育は個人主導で仕事を一旦中断し学び直すことを指すのに対し、リスキリングとは、企業主導(時として政府主導)で経営戦略(DX戦略)の一環として社員が新たなスキルを習得し新しい業務に就いてもらうことを指しています。「学び直し」という言葉を説明してきませんでしたが、「学び直し」とは、リスキリング、リカレント教育、アップスキリングなどを包括する概念として使われています。

■悲しき日本の現状

では、日本のビジネスパーソンの「学び直し」の現状はどうなっているのでしょうか?あまりにも悲しい実態が浮かび上がってきます。小職のコラム
圧倒的に学ばない日本のビジネスパーソン-学び直しの本質と変革の本質-」 にも書きましたので、ぜひご一読いただけると幸いです。

 

この悲しいまでの「学ばなさ」は何が起因しているのか?はまたの機会にさせていただくとして、残りの紙幅ではリスキリングのマクロ的なメリットを示すデータをご紹介します。成人の学習参加率と労働生産性の関係をプロットしたチャートです。これはEUのデータで日本は含まれていませんが、その両者には非常に高い相関関係が見られます。

 
図1 成人の学習参加率と労働生産性の関係
成人の学習参加率と労働生産性の関係?

『Works』No.179 p.41を元に筆者作成(元データはOECD)

 

日本の労働生産性が低いのはご存じの通りです。日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2022」によると、2021年の時間当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中27位、1970年以降最も低い順位となっています。日本の時間当たり労働生産性が低い要因に「長時間労働」が挙げられてきました。しかし、この点は改善されつつあります。長時間労働が改善されてもなお依然として日本の時間当たり労働生産性が低いままなのは、「日本人ビジネスパーソンの学ばなさ」がその本質的な要因なのかもしれません。

 

(参考資料)
小林祐児『リスキリングは経営課題』光文社, 2023
リクルートワークス研究所「労働力不足社会vol.3 リスキリング先進国」『Works』No.179 2023.08-09

 

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コラム執筆者

長谷川 岳雄
長谷川 岳雄

明星大学 経営学部 特任教授/株式会社みらいへ 代表取締役

 

1991年早稲田大学商学部卒業、2004年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際経営学専攻修了。
経営学修士(MBA)、キャリアコンサルタント(国家資格)、MBTI認定ユーザー

 

1991年オリックス株式会社入社。法人金融サービス部門の営業に従事。その後、大学院修士課程を経て、人事部にて勤務。新卒採用、研修の企画・運営、人事制度・評価報酬制度の企画・運営を担当する部署の責任者を歴任。2013年に独立し、(株)みらいへ設立。大学教員・企業研修講師として活動。三重大学特任教授を経て、現在は明星大学経営学部特任教授。専門は、キャリア開発とリーダーシップ。

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