働き方改革を踏まえた
 労務管理の再チェック①
~新型コロナウイルス感染症の影響で広がるテレワーク制度本格導入の注意点~

2020年07月22日

働き方改革関連法が2019年4月1日より施行され(一部経過措置あり)、企業においては、時間外労働の削減、36協定の新様式での締結、年次有給休暇の取得促進、同一労働同一賃金対応など、慌ただしく対応を迫られたものと思います。ただ、現時点においても、働き方改革を踏まえた労務管理の見直しが十分な企業は多くありません。

そこで、今回から3回にわたり、働き方改革を踏まえた労務管理の再チェックのポイントをご説明します。

第1回である今回は、働き方改革のひとつの柱である「柔軟な働き方の促進」としてのテレワーク制度について取り上げます。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言により、臨時的にテレワーク制度を実施せざるを得なかった企業が大半かと思いますが、実際にテレワーク制度を実施してみると、当初の想定よりも上手く機能している、業務効率が上がったという話も耳にします。今後、社会全体が新しい生活様式を取り込んでいかざるを得ないことを考えると、企業において、テレワーク制度は欠かすことのできない制度といえます。

ただ、テレワーク制度を本格導入した場合、緊急事態宣言中は見過ごしてきたトラブルや問題が顕在化してくることが想定されます。そこで、以下では、テレワーク制度を導入する上での注意点について説明します。

~テレワーク制度の本格導入の注意点~

前提(本格導入の手順)

テレワーク制度と一口にいっても、多種多様な制度が考えられます(テレワーク自体、在宅勤務のみならず、サテライトオフィス勤務やモバイルワークなども含みます)。そこで、どのような制度が各企業の実情にあっているのかを考え、それをテレワーク勤務規程として落とし込み、運用していくという手順を踏む必要があります。

当然、作成したテレワーク勤務規程は、緊急事態宣言中の臨時的なテレワークとはルールが異なると思いますので、本格導入する制度がどのようなものであって、労働者にはどのような負担が生じるのか、説明会を開くなど、適切に理解をさせることが必要です。

対象労働者

全労働者を対象にすることができる業種であれば悩む必要はないのですが、大抵の企業は、業務の性質上、特定部門の労働者にはテレワークを認めることが出来ないケースがあります。 本来、労使間の契約において勤務場所を会社の特定の事業場としているはずです。対象労働者の範囲をどのように設定するかは、使用者の裁量に委ねられているため、業務の性質を理由に、特定部門の労働者をテレワーク制度の対象外とすることは可能と考えます。

ただ、今回の緊急事態宣言中もテレワークを実施していたのであれば、業務の性質から直ちに不可能とまではいえず(少なくとも、労働者はそのようには受け止めず)、また、労働者間の不公平感を生じさせるリスクもありますので、対象外とすることに説得的な説明が可能であるかを慎重に検討すべきです。同一労働同一賃金との関係もありますので、単に「非正規社員だから」という理由で対象外とすることは避けるべきです。

労働時間管理方法

テレワーク勤務中の労働時間管理方法については、通常勤務時と同様に、始業と終業の時刻、休憩時間帯を正しく把握すべきです。事業場外労働みなし制度を用いるということも想定されますが、情報機器が発達し、テレワーク勤務自体を制度として認めることが可能な今日においては馴染まないものと考えます(この点については、通達(平成20年7月28日基発第072802号)において、事業場外労働みなし制度を用いる場合の要件が明示されております)

働き方改革関連法によって、時間外労働の上限規制や労働時間の状況把握義務が規定されたことも踏まえ、使用者の労働時間管理にはこれまで以上に厳しい目が向けられていますので、正確な実労働時間の把握は不可欠です。仮に、緊急事態宣言中は目を瞑っていたこと(例えば、中抜けをして買い物をする、所定労働時間以外に(例えば早朝、深夜)に就労をして1日の所定労働時間を満たす)ことについても、本格導入するのであれば、きっちりと管理し、指導していく必要があります。

テレワーク勤務時の環境整備

テレワーク勤務時は、社内での情報管理が行い得ない面があるため、どうしても情報漏洩の危険が伴います。私物パソコンの利用は認めない、仮に認めるとしても情報セキュリティが十分かを確認するなど、情報漏洩を防止するための環境整備は不可欠です。テレワーク勤務時の情報セキュリティに関する研修会を実施することも有益です。

また、本来、自宅で働くことを想定していない労働者の場合、業務のための設備(机、椅子、照明等)が整っておらず、その結果、肉体的・精神的負担を生じさせてしまう可能性もあります。環境整備が十分であることについて、労働者に申告させることも使用者の安全配慮義務との関係では重要です。

テレワーク制度の本格導入に伴って想定されるトラブルや問題点は、上記に限られるものではありません。特に、実際の勤務状況を目視できないため、人事評価をどのような形で行っていくべきか、悩ましい問題です。また、ウェブ会議の活用による新しいハラスメントの態様なども、今後、生じてくることが想定されます。

新しい制度であるからこそトラブルや問題点は避け難いのですが、しっかりとしたテレワーク制度の構築を行って労使間のルールを明確化にした上で実施することが肝要です。

コラム執筆者

柴田 政樹松田綜合法律事務所 弁護士(東京弁護士会)

労働訴訟(労働者たる地位の確認請求、残業代請求等)、労働審判手続き、団体交渉、企業の労務管理のアドバイス、就業規則の改定等、労働案件を多数担当。

執筆 ・「合同労組からの団体交渉の申入れがあったら」(日本実業出版社・企業実務2016年1月号)
・「退職勧奨を契機として精神疾患等を主張されたら」【共著】(日本法令・ビジネスガイド2017年2月号)
・「副業容認で注意すべき企業の民事責任と対応策」【共著】(日本法令・ビジネスガイド2018年10月号)

講演実績 2016年11月 社会福祉法人における労務対策セミナー(神奈川)
2017年2月 企業における労働時間リスク対応セミナー(東京)
2018年4月 医療機関向け労働時間リスク対応セミナー(東京)
2018年5月 労働訴訟を踏まえた労務対策セミナー(神奈川)
2018年10月 医療機関向け労働時間リスク対応セミナー(広島)
2018年12月 働き方改革対応セミナー(東京)
2019年2月 労基署対応セミナー(千葉)
2019年2月 働き方対応書式セミナー(大阪)
(その他多数の労務セミナーを担当)

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