人もAIもミスをする ― AI・SNS時代に必要な”信頼を守る仕組み”
2025年10月15日
「うちは大丈夫」が一番危ない
「うちの社員は真面目だから」「AIを入れたから効率化できている」――そんな安心感の裏に、実は大きなリスクが潜んでいます。
今、多くの企業で”真面目にルールを守る人”ほど、効率化ツールの使い方を誤り、意図せず会社の信頼を損なうトラブルを起こしています。
AIは便利で高速ですが、「正しいかどうか」を判断することはできません。
だからこそ重要なのは、「誰が間違えたか」ではなく、「どうすれば守れるか」を仕組みで明確にしておくことです。
メールの誤送信も、AIの誤生成も、SNSでの不用意な発言も、原因の多くは”注意不足”ではなく”確認の仕組み不足”です。
信頼を守る組織とは、ミスを前提に支える仕組みを持つ組織です。
AIが出すのは”仮説”だけ
生成AIは、過去のデータをもとにもっともらしい答えを作りますが、事実確認や倫理判断は人の仕事です。
つまり、AIの出力は常に”仮説”であり、人が検証して初めて”正解”になります。
企業の現場では、この「仮説を検証する仕組み」が欠けているケースが多く見られます。
2024年の調査では、AIを導入している企業のうち44.1%が「ヒヤリとした経験がある」と回答しています(ChillStack/Freeasy「生成AI利用に関する調査」2024年9月、生成AI導入企業担当者600名対象)。
総務省も「生成AIは誤った情報をもっともらしく出すハルシネーションのリスクがある」と指摘しています。
このようなリスクを防ぐには、AI活用を「人+仕組み」の両輪で運用することが不可欠です。
AIの導入効果よりも、「確認」「検証」「記録」という運用の仕組みづくりこそが、信頼を守る最大の鍵になります。AIの導入効果よりも、「確認」「検証」「記録」の運用設計こそが信頼を左右します。
AIも人も、間違える仕組みは同じ
AIの誤出力も、人の誤判断も、原因は似ています。
それは「思い込み」「確認不足」「情報の偏り」。
たとえば、Amazonが2014年に開発していたAI採用システムは、学習データの偏りによって女性応募者を不当に低く評価し、最終的に運用が停止されました(ロイター報道)。
技術の問題というより、検証プロセスの設計不備が根本原因でした。
つまり、”AIの誤作動”も”人の判断ミス”も、発生のメカニズムは同じです。
防ぐべきは「人の不注意」ではなく、「ミスを検知できない構造」です。
信頼を守る3つの仕組み
信頼を「意識」で守るのではなく、「仕組み」で守るためには、次の3点が鍵になります。
① ルールの明文化
AI利用ガイドライン、SNS発信ルール、データ取扱基準などを誰でも理解できる形で明文化する。
判断が分かれる箇所には”NG例とOK例”を具体的に記載し、現場で迷わない設計にします。
② チェックと共有の仕組み
AIが生成した文書や画像は必ずダブルチェック体制を設ける。
また、誤り検知ツールや共有チャットなどを活用し、「発見から報告までの流れ」を見える化します。
③ 相談と報告のライン整備
「困ったら誰に報告すればいいか」を明確に。
相談窓口や承認の流れ、報告の方法(口頭・メール・フォームなど)を整理し、”早く報告できる環境”を整えることが最大の予防策になります。
これら3つの仕組みが整えば、たとえミスが起きても致命的な事故にはつながりません。
“文化”は仕組みの積み重ねで育つ
「報告しやすい文化をつくる」と言うのは簡単ですが、実際には”報告しやすい仕組み”が先に必要です。
たとえば、定期的なヒヤリハット共有会、AI誤出力の事例報告制度、失敗事例の社内ライブラリ化など。
「ミスを学びに変える構造」がある組織ほど、信頼の再現性が高くなります。
また、ミスを隠させない言葉がけも重要です。
「早く教えてくれてありがとう」――この一言が、報告文化を育てます。
信頼の定義を”行動”で示す
頼とは、再現性・検証性・透明性がそろった状態です。
•再現性:同じ判断が誰でもできる
•検証性:根拠を確認できる
•透明性:プロセスが見える
つまり、「属人化をなくすこと」が、信頼を守る第一歩です。
AI時代のコンプライアンスは”禁止”ではなく、”再現可能な判断基準”を持つこと。
そこに教育・ガイドライン・報告体制の3つが連動すると、組織は“個人で守る”から”仕組みで守る”へ進化します。
完璧ではなく、改善を前提に
AIも人もミスをします。大切なのは、「ミスをどう減らすか」ではなく、「ミスをどう早く見つけて修正するか」です。
失敗を責めず、再発防止の手順をすぐに見直せる仕組みを持つことが、組織の強さになります。
信頼は意識で守るものではなく、プロセスで維持するもの。
完璧を目指すのではなく、改善を繰り返す仕組みを育てることが、AI・SNS時代における最も現実的なリスク対策です。
まとめ
ミスを防ぐ唯一の方法は、「人を責めないで、仕組みを点検する」こと。
そして、“報告・検証・改善”のサイクルを止めないこと。
それが、AI時代に信頼を守るための最も実務的なコンプライアンスです。
本コラムの関連セミナー
セミナー詳細
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コラム執筆者
年間100件以上の研修・セミナーに登壇。「わかる」を「できる」に変える――実践できる仕組みづくりと人材育成を得意とする。
参加者が安心して学び、考えを深められる場づくりを大切にしながら、「人を育てること」「仕組みを整えること」「現場で成果につなげること」を軸に、企業や自治体の課題解決に直結する研修を多数提供。
業務効率化と教育設計を”現場の視点”で結び、AI・SNS時代に必要な「考えて動ける人材づくり」を支援している。