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高年齢者雇用安定法改正の概要と実務対応をわかりやすく解説

2022年05月16日

1.高年齢者雇用安定法の法改正の概要

2020年3月31日に改正高年齢者雇用安定法が公布され、65歳以上70歳未満の定年を定めている事業主又は継続雇用制度(高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く)を導入している事業者は、その雇用している高年齢者について、現行法で定められている65歳までの雇用確保義務に加え、努力義務として、以下のような70歳までの就業確保措置をとることが追加されました(高年齢者雇用安定法10条の2第1項)。

 

(1) 70歳までの定年引き上げ
(2) 65歳以上の継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(3) 定年制の廃止

なお、その事業主に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合の、
そのような労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得た以下のような創業支援等措置を講ずる場合は、上記のような就業確保措置は不要とされています。

 

(1) 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(2) 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
・事業主が自ら実施する社会貢献事業
・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

2.改正高年齢者雇用安定法の努力義務とは

努力義務とは、法的拘束力や罰則がなく、その対象として定められた事項をどの程度対応するかが専ら企業の裁量に委ねられていることを意味します。
したがって、努力義務は、対象事項への対応が完了していなかったとしても、それだけで違法とは評価されません。

 

もっとも、 70歳までの安定した就業機会の確保のため必要があると認められるときは、 高年齢者雇用安定法に基づき、厚生労働大臣による指導・助言の対象となる場合があります(高齢者雇用安定法10条の3各項)。

 

また、当初は努力義務規定とされた場合であっても、後に義務規定に改正されることがあります。実際、高年齢者雇用安定法では、かつて、定年を定める場合には60 歳を下回らないように努めるものとするという努力義務規定を置かれていました。

 

しかし、周知の通り、歴史的には平成6年の改正により60 歳を下回ることができないという規定となり、さらに現在では、65 歳未満の定年を定めている事業主に定年の引上げや継続雇用制度の導入等の措置を講ずることが義務付けられました。

 

したがって、努力義務だからといって、全くその内容を考慮する必要がないというものではないので注意しましょう。

3.実務への影響

このように、現状、高年齢者就業確保措置は努力義務であり罰則はありませんが、導入時期やその具体的内容は各企業の判断に委ねられているため、企業の実情を踏まえて対応を検討すればよいことになります。

 

なお、仮に当該措置を導入する場合は、対象者を限定する基準を設けることも可能とされています。対象者を限定する基準の策定に当たっては、過半数労働組合等と事業主との間で十分に協議の上、各企業の実情に応じて定められることを想定しており、その内容については、原則として労使に委ねられます。

 

ただし、労使で十分に協議の上、定められたものであっても、事業主が恣意的に特定の高年齢者を措置の対象から除外しようとするなど高年齢者雇用安定法の趣旨や、他の労働関連法令に反する又は公序良俗に反するものは認められません。

 

そこで、対象者に関する基準を策定するにあたっては、
①対象者の意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)
②必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)

 

という2つの指標を踏まえるべきです。たとえば、60歳以降65歳までの間に懲戒処分を受けていないこととか、健康診断の結果等から勤務の継続に支障がない健康状態であると認められること、といった基準が挙げられるでしょう。


コラム執筆者

中川 洋子
榎本・藤本総合法律事務 弁護士
東京大学法科大学院修了、2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
企業法務(労務、会社法、コーポレートガバナンス等)に関する紛争予防、紛争解決、一般民事事件、刑事事件などを取り扱う。
経営法曹会議会員。第一東京弁護士会労働法制委員会委員。

著書・論文

  • 『多様化する労働契約における人事評価の法律実務』(共著、第一東京弁護士会労働法制委員会編、労働開発研究会、2019)
  • 『現在の制度検証から労働組合との交渉まで 制度変更時のプロセスに即した実務課題と紛争予防の視点』(中央経済社「ビジネス法務」2020.12)

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