雇用安定措置における「キャリア・コンサルティング」と「教育訓練」

 派遣元に義務付けられている「雇用安定措置」については、以前解説しましたが、実は、派遣社員の納得性を担保する、つまり、トラブルが起こらない「雇用安定措置」を実施するためには、「キャリア・コンサルティング」と「教育訓練」が大きな役割を果たします。
 今回は、この2つと雇用安定措置の関係について解説します。

「キャリア・コンサルティング」が必要な理由

 「雇用安定措置」には、①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな派遣先の提供、③派遣元事業主における無期雇用の3つがあることは既にご周知のことでしょう。言うまでもないことですが、選ぶ主体は、「派遣労働者本人」。改めて、本人の希望を確認することが必要なのです。なぜなら、現在の派遣就業を開始した際のエントリーシートなどは、3年前のもの。働き方への志向やライフスタイルが変わっている可能性は大いにあるからです。そして、「本人の希望を確認する」機会こそが、「キャリア・コンサルティング」なのです。
 さらに、雇用安定措置の観点からは、キャリア・コンサルティングで本人の希望確認に加え、最近の業界動向や地域の雇用事情などの情報提供をすることを心がけることも重要でしょう。なぜなら、仕事を取り巻く環境も変化しているからです。 例えば、②の「新たな派遣先の紹介」を選択した際に、一般事務の仕事が自動化などで置き換えられている可能性はあります。次の派遣先でも一般事務に固執するなら、元の派遣先から時給・待遇などが大きく下がってしまったり、本人の希望とは異なる就業先しかみつからないという事態も出てきてしまうのです。そうなると、場合によっては、要領で定められた「新しい派遣先は元の派遣先の待遇などを比較して合理的な範囲のものでなければならない」というところに抵触しトラブルに発展する恐れもあります。
 現在の雇用を取り巻く環境についてきちんと情報を提供し、次の就業先に繋がる教育訓練を提案し、新たな選択肢を広げていく必要があると言えるでしょう。

「教育訓練の実施」はゴールを明確に

 雇用安定措置には前述した3つの選択肢に加え、④その他安定した雇用の継続が確実にはかられると認められる措置」も挙げられています。
 この具体的内容として、紹介予定派遣に加え、「新たな就業先を提供するまでの間に有給の教育訓練を実施すること」が挙げられています。教育訓練期間中の有給について、要領では、具体的には解釈していませんので、予め就業規則や労働契約により明記しておく、つまり、「枠組み」をきちんと決めておくことが必要です。また、雇用安定措置の観点からは、「このスキルを身に付ければ、こんな就業先で働くことができる」という「ゴール」を提示し本人と共有したうえで、そこに向かって教育訓練をすることがより良い結果を生むと言えます。